先日、コメントゲストのあられさんが、こんなコメントを残してくださいました。
以前知り合いの大学の先生が「初級中級の人には“造句”させないほうがいい。中国語として正しい文を大量に触れさせる(音読・暗誦させる)ほうが、よい」と言ってたような・・・。
これに対しては私も少なからず思うところがあるので書いてみようと思います。
私個人の意見では、学習初期の段階、それこそ発音も声調もままならないうちに
書く練習をメインにしていくのは、かなり非効率的だと思っています。
(あくまで
初心者にとって、ということで、文法も一通り学習し終えた、という人は
これにはあたりません。)
もし中国語学習の最終目的がメールや筆談といった文字ベースのコミュニケーションだとか
中国古典や文学を中国語で味わうこと、というのなら、それでもいいのかもしれません。
だけど、実際に中国人と話してみたい、中国に行ったときにコミュニケーションを取りたい、
というのが最終目標であるとすれば、作文から学習をすすめるのはお勧めできません。
私自身、ここで4月に本格的にBlogを始めるまで、簡体字入力ができなかったことも
ありますが、自分で作文することはめったにありませんでした。
(だから中国語を書くことに対してまだ抵抗があるんですが。。。)
初期の段階では、語彙も知らないし、中国語に多くある特有の呼応表現も知らない。
そういうのを知らないまま、日記などのよう自分の言いたいことを、まず日本語で
考えて、それから中国語に変換していくと、辞書を調べる手間もかかるし、
簡単な日中辞典では例文が載ってなくて、たとえ対応する訳が載っていたとしても
自分の言いたい文脈の中で、その単語を使うことが中国語として自然なのか、
といったことが判断できません。
そうして時間をかけて書いたものを、きちんと添削してもらえる人はまだいいのでしょうが、
一人で書いただけで満足してしまうと、それ以上の伸びは見込めません。
作文を書くのに費やすだけの時間を、発音練習、ラジオ講座、語彙習得などにまず
まわした方が、よっぽど効率的だと思うのです。
学習初期ではとにかく良質な大量のインプットが必要だと思います。
これは言語の語感を身につける上で、絶対に必要。
だから、たとえばインターネット上の中国語の記事を読んだり、音声付の参考書を
使ったり、ドラマを見たり、歌を聞いたり。
とにかくたくさんのインプットをします。このときに大事なのは同じ中国語でも
ネイティブの書いたものを読む、ということ。
日本人でも、中国語で日記を書いている人はたくさんいますが、
その人の中国語がどれくらいのレベルか、というのは初心者には測ることができません。
その日記を読んでしまうと、「なるほど、こういう表現をするのか」と、もしかしたら
間違っていたり、日本人らしい中国語をインプットしてしまうことになります。
日本人が中国語で書いた日記を、ネイティブがきちんと添削してもらっている
場合は参考になりますが、やっぱり学習初期ではネイティブの語感を身につける
ためにもネイティブの書いたものにふれるほうがよいと思います。
語学学習においては「暗誦が有効」とよく言われます。
たくさんの短い例文をとにかく暗記する。
そして、その例文の単語を入れ替えて使ったりすることで自分なりの文章に変えてみる。
英語学習においても「英作文」は「英借文」と言われることがあります。
自分の覚えている文を発展させて、自分の言いたいことを表現します。
私は仕事で「日→英」の翻訳をすることがあるんですが、
「英借文」が大好き、というか、どういう言い回しをしていいのかわからないときや
不安なときは、インターネットの検索機能をフルに活用しています。
たとえば原因説明をしている報告書の時には、同じくそういう報告書を探して
使える表現を見つけます。
いまだに自分の英語力にあまり自信がないため、こういう言い回しをするのかな、
というときなども、すぐに検索して確認します。
だから翻訳中はGoogle全開という感じで、ものすごい量の検索履歴が残ります。
でも、そういった中で、つねにネイティブの文章に触れているので、英語の
語感というのもついてきていると感じます。
中国語でも同じことが言えます。
私の行ってる中国語教室では、毎回一人一文の中国語を発表することになっています。
先日は、GWについてのことにしよう、と私は思いました。
「人ごみや渋滞が嫌いなので、特に遊びに行かなかった」といった意味のことを
言いたい、と思いました。
だけど、まず私がインターネットで調べたのは「黄金周」をキーワードにした中国人の
日記(blog)。中国人が、どのように過したか書いているのを見てみよう、と思いました。
そして、次のような文を集めました。
黄金周是上班族最好的出游机会,但是每到这时候・・・。
城市中的人喜欢黄金周出游。
黄金周出游7天内总是会贵一些。
许多人都不想在黄金周出游,到哪都是人多。
五一出游的人太多,不如在家睡睡觉、逛逛街。
まだまだ集めた文はいろいろあるのですが。。。
「旅游」でも「旅行」でもなく、「出游」という言い方が使われてるんだな、とか
集めた文から勉強することができます。
で、私が授業用に用意した一文はこれ。(↓)
因为我不喜欢人多、车多的地方,所以黄金周我几乎都在家里度过的。
先日の授業では時間がなくなったので、私は発表を遠慮してしまいましたが、
それでも発表できなくて残念だったな、とは思いません。
だって、私にとっては、中国語教室でのこの一文の発表よりも、この文章を考える過程で
いろんな文章を見れたことのほうが勉強になっているから。
あるサイトを通じて知り合った中国人も3人ほどいます。
たま~に短いメールをやりとりする程度なのですが、そのときにも文法的に
十分な下調べをしたうえで、メールを書いてます。
そして、たとえばAさんにもらったメールの中の文の構文を使わせてもらって
Bさんに書いたり、といったこともしてます。
悪く言えば「使いまわし」ですが(笑)、実はこれって作文する上でもとても勉強に
なっているような気がします。「あー、こういう言い方できるんだ」「よし使ってみよう」
といったことができるから。
昔は英語の文通相手を見つけるのも難しかったし、手紙を何週間もかけてやっと
相手のところに届くから、それなりに中身のある長めの文章を書く必要が
あったと思いますが、(私はしたことがないですけど)、今は瞬時に相手に
届いて、それも3~5文書くだけでもやりとりできるから、やっぱりとてもいい時代ですね。
なんだか話がそれてしまったかな?
でも、私の意見としては、初心者にとって、自分の言いたいことを直訳で
中国語に訳したり、日記を書いたりする、というのは効率が悪い、
それなら、その時間をもっと他のインプットに当てるべき。
インプットして、素材(語彙、文法、語感など)がたまってきたら、徐々にアウトプット
の練習をして、なおかつ、インプットは常に続けていくべし、ということです。
みなさんは、どのようなお考えをお持ちでしょうか?